九州大工塾2025 第一回二日目(2025年1月12日)

九州大工塾2025 第一回二日目(2025年1月12日)

 

①有薗製材所にて

当初は朝から山の見学・伐採の見学を予定していたが悪天候のため急遽、有薗製材所での製材見学に変更となった。

ちょうど九州大工塾・九州杢人の会が工事に参加予定のプロジェクトで使用予定の楠(クスノキ)が搬入されていたこともあり、実際の製材の過程を見せていただくこととなった。

 

 

実際の製材を見る機会はなかなか無く、楠の濃厚な香りが立ち込める中寸法にしたがって製材が進む過程は楠が新しい姿に変わっていくようであり、あらためて木の可能性を感じるものだった。

伐採から半年以上経過した楠ではあったが製材してみるとまだまだ中心部には水分が多く、建築構造材として使用するには含水率が高すぎる状況が確認された。

しかしながら、このまま乾燥を続ければ木材としての楠には充分に可能性があることも感じられた。

 

ちなみに前日のシロアリレクチャーで教えていただいたが楠は伐採後は比較的害虫に強いと言われているが、立木の状態では根にシロアリの巣がある場合が多いらしい。

ますます木材の不思議な魅力、神秘性を感じた。

 

②林業のこれから 有薗製材所 有薗氏

製材所での見学の後、場所を移動して有薗氏による山・林業・木についての講義が行われ、日本における山の歴史、林業の経過や木との生き方を学んだ。

 

 

製材所での見学後ということもあり木に対する向き合い方、見方が今まで以上に新鮮に感じられた。そして有薗さんのように山・木そして現場の大工さんたちに真摯に向き合う製材家は現代ではとても貴重な存在だと感じた。

 

③省エネ法について 丹呉明恭氏

2025年4月からの建築基準法改正に伴う変更点、省エネ法に関する内容について講義を受けた。省エネに関しては法令化されているため遵守しなければならないが私個人の意見としては省エネに関する数値目標だけが先行してしまい、結果的に化学製品を中心とした新建材が圧倒的に有利になってしまっていると感じる。

 

国際的に決められた数値目標については理解するが、なにをもって「省エネ」とするかは判断の基準によって大きく変わると思う。

数値が優れているからといって製造に石油・電力を大量に消費することが省エネなのか? 再生できない製品の利用拡大は省エネなのか? まだ使用できる建物を経済性だけで解体・新築を繰り返すことは省エネなのか?

 

いま海外からの訪日者は増える一方だが、彼らが見に来ているのは日本らしい日本であり、どこかの国と似たようなものがある日本ではない。

私たちが参加している九州大工塾、九州杢人の会が自分たちの考える省エネへの貢献、日本らしい日本への貢献ができればと願う。

(宮下信二)