第7回九州杢人の総会・研修<前半>
1.古荘家再生(SALAカフェ:熊本県益城町)
熊本地震の震源地にほど近い益城町に位置する古荘家。
元外務大臣 谷正之氏の生家で建築年は不明(明治35年前後と思われる)の木造住宅だが熊本地震で大きな被害を受けたそうだ。
なんとか倒壊は免れたものの建物の変形、位置のずれ、主要構造部(柱梁)の損傷が大きく、地域の被災住宅の8割が解体される中、なんとか修復したいという建築主の古荘さんの思いを受けて約15か月の工期で再生工事がなされたとのこと。
施工をされた田口技研の田口さんによると当時の状況は被害は大きかったものの、なぜか何とかあるだろうと思ったとのこと。
柱の通りも通っていない状況での修復計画や作業のエネルギーは想像を絶するが、多くの方の協力やワークショップ等を経て修復工事が完成したそうだ。
修復後の現在はカフェ+セレクトショップとして営業されておりランチをいただいた。その素敵な雰囲気からは被災後そして工事期間の当時の状況は想像できないほどだった。
この建物を修復して残したいという建築主の古荘さんの情熱に感服しつつ、こういった現場でもその状況に応じての創意工夫・臨機応変な対応力こそ杢人の会のメンバーの真骨頂と田口さんのお話を聞いて感じた。
2.熊本市内にて街並み見学
熊本市内に移動し、新古今社設計事務所の宮野さんのご案内で街並み見学を行った。
加藤清正による街づくりで一つの街区にそれぞれ寺社を持った独特の都市計画。
3.坪井川沿いの建物見学
新町の工務店の代表である宮本さんのご案内で木造建築を見学。
当時の流通手段の一つである川を利用した建物で独特のスキップフロアで構成されていた。ただ川近くということもあり湿気の影響は大きそうだった。
4.宮野さんの事務所見学
場所を移動し、宮野さんの事務所を見学させていただいた。
古い蔵をリノベーションして設計事務所として利用されており外壁の一部は延焼ラインの関係で漆喰仕上とされていた。
5.唐人町周辺の見学
坪井川沿いの唐人町周辺を歩いて見学。
古い建物と新しい建物とで構成されているが、落ち着きと華やかさをあわせ持ったおしゃれな雰囲気の通りだった。
日本であればどこでも被災し得る地震災害からの復興の中で、古い建物と新しい建物の関係は時間と経済的な理由で決定されていることがほとんどだと感じた。
建築主・設計者・施工者の情熱だけではなく、文化的な価値に対する国、県、市といった行政等のサポートが充実すれば、この時間と経済的なハードルはもっと乗り越えやすくなると期待する。
(宮下信二)