九州杢人の会2024年春の研修 大分県別府〜由布<前半>
2024年4月13日(土)
昼すぎに温泉地別府に集合。温泉街の道は狭いので乗り合わせて車両を最小限にし、見学に向かった。今回は由布市に工務店を構える簑原さんの仕事を見学させていただいた。
1軒目:実相寺の家
山の別荘地の急斜面を巧みに利用した2階建て住宅で、存分に自然を感じ別府湾が一望できる家である。築十数年、敷地内にかけ流しの温泉を引いており、常に温泉に入ることができる。玄関が2階にあり、道から屋根に飛び移れるような斜面で、「よくこんなところに建てたね」と感心した。
家の骨組みは300角1尺の角材が大黒柱として土台から棟木まで通り、それに9寸角の梁がさしてある。太鼓梁はそれにかかっている。大きい材料で、梁は手が届きそうなくらい低い位置なのに圧迫感を感じない空間。これが簑原大工の特徴的な造りなのだ。お施主さんは伝統的な造りを強く希望され、まさにそれが実現できて満足されているとのこと。木製の建具もよく馴染んでいる。手すりの付け方も金物が見えない工夫があり、簑原工務店の巧さが見えた。
2軒目:石垣の家
引き渡して1年目。1軒目と同じく、真ん中に1尺の大黒柱が建っていて、9寸角の梁が差してあり、そこに太鼓梁がかかる渡り腮の造りである。これが簑原大工のこだわりなのだろう。住宅街に建つ平屋で、壁は漆喰仕上げ。こちらにも温泉が引いてあった。温泉ゆえに浄化槽の件では苦労があったようだ。作り付けの家具(ブラックチェリー、赤みが美しい材料)がひときわ目を引いた。
3軒目:小倉の家
簑原大工には屋根じまいまでを頼まれ、あとはお施主さん自身が内装も外装も施工されているとのことである。日本庭園風の庭、敷石などもお施主さん自身の施工である。
ご自分で解体予定の家主に交渉して、古材を調達されたとのことだ。
古美術の収集を極めておられるお施主さんによれば「まだ完成していない、十何年かけてまだまだ施工中」とのことである。
簑原さんはとにかく材料が大きい。内法などを低くすると圧迫感がありそうなところ、それを感じさせない空間で、いいなあと思った。梁は、背伸びすれば届くような感じである。天井の勾配の工夫で空間が広く見える。わたしの場合、以前はあまり梁を見せずに天井を貼っていたが、渡り腮をするようになって、梁の骨組みを組んでいるところが見えるようにしてほしいと言われるので勾配天井にするようになった。そこに、簑原さんのような見せ方も活かしたいと思った。
九州杢人の会や九州大工塾などで、いろんな例を見ることが非常に参考になる。今後は梁を低くすることも考えてみたい。
(押川博美)
後半の「赤野の森」はページを改めて掲載します。