九州杢人の会、令和5年度総会及び現場研修会
令和5年6月17日土曜日
現場研修会―1:糸島市福吉 「東屋」施工後の現状調査と杉材の経年劣化調査。
11時 現地集合した。参加会員:池上一則、堂薗隆博、山村康正、櫛下町和洋、菅本義一、加賀田憲治、会員6名。講師:丹呉明恭。
研修内容:糸島市福吉「東屋」令和4年1月25日竣工。竣工後1年5か月を過ぎた東屋の経過点検。
- 板壁が乾燥による沈み込み(セトリング)を起こして、梁下で37mmの空間が出来ている。壁板材は糸島杉天然乾燥材、源平。施工時の含水率約20~23%程度。復元工事施工。
- 復元工事:梁と桁の全体をジャッキで均等に上げて、施工時と同じ杉板材t30mmを差し込んで修復する。梁と柱の接合部の“込み栓”を抜く。棟の貫を抜く。渡り顎で桁から出ている部材にジャッキを当てて、均等に上げてゆく。50mm近く上げて、補修板材(t30xh37xw1,135X2枚)を隙間に差し込み全体を降ろしてジャッキを外した。すべての“込み栓”を打ち直して梁部材を固定して作業を完了した。
- カウンター天板東側の板壁も乾燥からの微小な下がりが見られたので、板材を調整した。
- 屋根材は糸島杉の赤身材t30mm材を重ね貼りして葺いている。それを杉赤身材の押し縁で抑えている。防水、防腐剤は塗布していません。無垢材のまま暴露後、17か月経過状況は、屋根の表と裏から点検したが、押し縁のはがれ、反りは見られない。屋根杉赤身材も雨水の浸透痕も見られなくて、特に異常はありませんでした。
- 風雨にさらされている状態で、このまま10年間の経過観察を続けて行きたいと思っております。
現場研修会―2:糸島市加布里、「正入寺 鐘楼」経年劣化調査を行った。
「東屋」作業完了後「正入寺 鐘楼」の点検へ向かう。
点検内容:令和元年10月23日竣工。工事内容:鐘楼内部の床貼り、鐘撞き場床を改修、階段を切断し加工をした。鐘楼の柱八寸角が傾いていたので、丹呉さんの指導もあり柱間に地貫を差し込んで柱を固定した。
外部は焼杉板を貼り替えた。使用した焼杉は現場で焼いた。
- 内部の床や階段、柱に異常は見られない。除夜の鐘を撞く時の撞きやすさがあり、皆さんに好評だと言われました。
- 外部焼杉板は約4年を経過して、風雨で炭化した表面が薄くなっているところも見られますが、特に、割れや剥離などは見られなかった。経過観察を続けます。
- ご住職と奥様と九州杢人の会のメンバーとの再会で、施工時の思い出話しに花が咲きました。また、施工の謝辞をいただき糸島地域での九州杢人の会の認知度が高まっているようでうれしいことでした。
「懇親会」
6月17日土曜日の懇親会は唐津の古民家を改修した「銀河食堂の夜」で行いました。
築約120年の古民家で、食事後に2階の構造を見学して、丹呉さんと古民家の改修に関する要点を質疑しました。オーナーから2階の改修希望があり、柱や筋交いの撤去とそれに代わる耐力壁についての質疑をも合わせて行われました。
質疑内容:
- 戦後に前面道路拡幅のため公共工事で家曳きをされているので、その時の作業時の筋交いが2階空間に残っている。2階をイベントに使うために、“筋交い”を取り除きたいという希望をオーナーが持っている。九州杢人の会と丹呉さんとで現場を調査した。
- 丹呉さんと、“筋交い”の撤去と補強する“耐力壁”の位置の問題について質疑応答を行いました。次回、山辺さんが唐津に来られた時に、実際の現場を見ながら構造についての勉強会を行う予定です。
6月18日日曜日
九州杢人の会 「令和5年度総会」を唐津「基幸庵」にて開催しました。
8:30~10:00 九州杢人の会 「令和5年度総会」開催。
10:00~12:00:丹呉さん講義
- 建築業界と国の方針。ZEHへの疑問点。
- 気候風土住宅について。
- 九州杢人の会の活動について。
以上のような内容で、講義と質疑応答が持たれました。
(加賀田憲治)